建物は、土地と違って、建てたり壊したりするものなので、建てた時は、建物の表題登記と所有権保存登記をする必要があります。

今回は、所有権保存登記申請のやり方を詳しく説明しておりますので、費用をかけず、ご自分でされたい方は、最後までお読みいただければと思います。

建物の表題登記と所有権保存登記が必要となる例は次の通りです。

  • 銀行、信用金庫などの金融機関から住宅ローンを借りて家を建てた
  • 金融機関からリフォームローンを借りて家を建てた
  • 相続をした建物が未登記であった

建てても登記をしないと、ずっと登記の無い状態が続きます。これを未登記の建物と言います。

実際上、未登記でも当面は困ることはあまりありませんが、表題登記をしないと一応罰則があります。また、将来的に誰の所有であったかわからなくなる場合もあります。

建物を建てたら、建物の表題登記と所有権保存登記を行うようにしましょう。

建物表題登記や所有権保存登記に関するトラブルの例は次の通りです。

  • 家の敷地に古い倉庫があるが何年も前からあって誰の所有かわからない。
  • 経営している貸家の賃借人とのトラブルで裁判になり、資料の提出を求められたが未登記のためない

このような、トラブルにならないために登記をした方がよいでしょう。

ちなみに、余談ですが、土地の場合でも、払い下げなど一定の場合に表題登記と所有権保存登記が必要となる場合があります。

建物の表題登記

建物の表題登記は、司法書士ではなく、土地家屋調査士にお願いすることになります。

建物を新築した場合は、1か月以内に建物の表題登記を申請しならないことにはなっています。

建物の表題登記とは、建物を法律上特定するために、はじめて建物登記記録の表題部に、その建物の所在や構造、床面積などを登載することをいいます。

当事務所では、建物の表題登記のために土地家屋調査士さんを紹介しております。

建物の表題登記の登記事項(登記記録に記載される事項)とその例はおおむね次の通りです。

所在青森県弘前市大字早稲田三丁目 2番地9
家屋番号2番9
種類居宅
構造木造亜鉛メッキ鋼板ぶき2階建
床面積1階66.66㎡ 2階55.55㎡
原因及びその日付令和4年2月1日新築
登記の日付令和4年2月13日
附属建物の表示符号1 車庫 木造亜鉛メッキ鋼板ぶき平家建 33.00㎡

所有権保存登記手続き

建物表題登記が終了すれば、いよいよ、だれが所有者であるかという所有権保存登記をすることになります。建物表題登記は、測量の知識が要求されるため専門家に頼む方がよいですが、所有権保存登記は司法書士を頼まなくても自分でやり遂げることもできるかと思います。

ここでは、お客様がご自分でされることを前提にどのように登記をしていけばよいか説明していきます。

なお、区分建物(分譲マンションなど)の所有権保存登記、表題部所有者が死亡している場合、判決による場合の保存登記については、ここでは説明いたしません。最もオーソドックスなパターンについて詳しく説明いたします。

住宅用家屋証明書を取得しよう

住宅用家屋証明書とは、個人が居住用として使用するために建てた家ですよという証明書です。この証明書を登記申請書に添付すると、登録免許税率が軽減されます。

この証明書を取得できるのは、主に下記のような条件を満たす場合です。建物が古い場合などこの条件に合致しない方は、読み飛ばして頂いてかまいません。

  • 新築であり、自分が住むために建てた。
  • 新築後1年以内である。
  • 新築建物の床面積は、50㎡以上である。

この証明書を取得するには、まず、新築建物所在地に自分の住所を変更するのが一般的なやり方です。まだ、引っ越しもしていないのにと思われるかもしれませんが、難しく考える必要はありません。

  1. 住所を物件所在地に移す
  2. 住民票を取得する
  3. 住宅用家屋証明書の申請をする

住宅用家屋証明書の申請には、おおむね次の書類を市区町村の税務証明の窓口に持参するとよいでしょう。

  • 住宅用家屋証明申請書
  • 住民票
  • 建築確認済証
  • 建物図面
  • 登記完了証(登記事項証明書でもよい)

住宅用家屋証明申請書の参考資料はこちらです。

添付書類は、自治体ごとに取り扱いに違いがあります。詳しくは市区町村役場にお問い合わせください。

弘前市の場合はこちら

青森市の場合はこちら

次の書類は、場合に応じて必要になる書類です。

  1. 長期優良住宅関係書類
  2. 認定低炭素住宅関係書類
  3. 家屋未使用証明書
  4. 未入居である場合の申立書

1は、新築した家屋が長期優良住宅である場合、2は、新築した家屋が認定低炭素住宅である場合に必要となります。

3は、建売などの場合に必要となります。

4は、まだ新築建物所在地に住所を変更していない段階で住宅用家屋証明書の申請を行う場合に必要となります。

詳しくは、市区町村役場にお問い合わせください。窓口は上記と同じです。

申請書作成に必要な書類

所有権保存登記の申請書作成に必要な書類は、次の通りです。

  • 表題部所有者の住民票
  • 住宅用家屋証明書
  • 表題登記完了証または登記事項証明書
  • 新築でなく1年以上経過している建物の場合評価証明書等

1は、必ず必要な書類になります、表題部所有者が共有(複数人)である場合その全員分の住所がわかる住民票が必要です。1通で全員分の住所がわかるなら1通でかまいません。

2の書類は任意ですが、取得していれば登録免許税率が軽減されます。3についてはケースバイケースです。詳細は下記で説明いたします。

登録免許税の計算

住宅用家屋証明書を取得している場合の登録免許税額課税価格×0.15%(百円未満切り捨て)
住宅用家屋証明書を取得していない場合の登録免許税額課税価格×0.4%(百円未満切り捨て)

課税価額は、「青森地方法務局管内新築建物課税標準価格認定基準表」をもとに計算を行います。計算例は次のとおりです。

住宅の構造が「木造亜鉛メッキ鋼板ぶき2階建」、種類が「居宅」の場合、基準表の「木造」「居宅」の交わる部分を見ると、平米単価が84,000円となっています。

居宅総床面積1階部分66.66㎡+2階部分55.55㎡=122.21㎡
居宅課税価格平米単価84,000円×総床面積122.21㎡=10,265,640円

車庫は「木造」「附属家」の交わる部分を見ると、平米単価が40,000円となっています。

車庫総床面積33.00㎡
車庫課税価格平米単価40,000円×総床面積33.00㎡=1,320,000円

車庫と物置の課税価額を合計して、最終的な課税価額を算出します。

居宅車庫課税価格合計10,265,640円+1,320,000円=11,585,640円
課税価格11,585,000円(千円未満切り捨て)
課税価格11,585,000円×0.15=17,377円登録免許税17,300円(百円未満切り捨て)
課税価格11,585,000円×0.4=46,340円登録免許税46,300円(百円未満切り捨て)

既に市区町村役場で評価証明書等の取得が可能である場合は、上記3の評価証明書の評価額の千円未満を切り捨てた値を課税価額として、計算を行います。税率は上記と同様です。

登記申請書の作成

さあいよいよ登記申請書を作成してきます。登記申請書の様式テンプレートはこちらです。

ここからは、見本を見ながら作成して頂ければ、わかりやすいかと思います。

見本は下記のとおりです。

赤文字の表示の部分が入力する事項です。

  • 所有者の住所氏名、連絡先
  • 課税価格
  • 登録免許税
  • 不動産の表示

緑文字は、住宅用家屋証明を使用する場合はそのまま、使用しない場合は削除していただく事項になります。

青色の表示は、青森地方法務局弘前支局であればそのまま、それ以外であれば変更する事項です。ただし、平米単価は青森地方法務局管内であれば、変更する必要はありません。

法務局へ申請

申請書が完成したら下記の添付書類と一緒に、登記申請書を管轄の法務局へ提出してください。

  • 住民票
  • 住宅用家屋証明書(軽減を受ける場合)
  • 評価証明書(場合によって)

不動産の所在地が弘前市内であれば青森地方法務局弘前支局、青森市内であれば青森地方法務局が管轄となります。その他、青森県内の管轄であればこちらに詳しく書いてございます。

1、2週間程度で完了いたしますので、法務局の窓口で登記完了証と登記識別情報通知を受領してください。

お疲れ様でした。

ちなみに、新築後1年以内でない場合の所有権保存登記や居宅以外の所有権保存登記は、住宅用家屋証明書が取得できないため、令和4年現在、登録免許税率が0.4%となりますが、申請書の作成の仕方は上記と同様です。

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