本店移転の登記

本店とは会社の所在地であり、本店移転とは、会社の本店所在地を変更することです。

事務所や会社を引っ越したい時は、まず、会社の定款を確認いたしましょう。一般に会社の定款の本店の記載は最小の行政区画まで記載されていることが多いです。

例えば、弘前市なら「第3条 当会社の本店は、青森県弘前市に置く。」などです。

このような場合、弘前市内で引っ越しを行うなら、株式会社の場合取締役会又は取締役の決定で本店を決めます。決めるというと変な感じがしますが、会社の場合、引っ越すにも会議を開いてどこに引っ越しますよと決める必要があります。

引っ越す先が、弘前市でなく青森市である場合、弘前市内であっても定款の記載が「第3条 当会社の本店は、青森県弘前市大字早稲田三丁目2番地9に置く。」などとなっている場合は、定款の変更が必要となり、株主総会の特別決議で定款変更をした後、取締役会や取締役の決定で細かい住所を決定することとなります。ややこしいですね。

事前事後準備

本店移転登記に先立って、または登記完了後に行う手続きは多いです。各官庁への届出は期限のあるものが多いので、スケジュールを組んで行うとよいでしょう。

基本的な諸手続きは下記のとおりです。

  • 移転案内状の作成
  • 電話回線・インターネットの移転手続き
  • 社内印刷物の作成
  • 設備機器・リース契約などの手続き
  • 郵便物の転送手続き
  • 銀行の登録住所変更

また、官庁への届出の主なものは、次の通りです。その他、許認可事業を営んでいる場合は、別途管轄官庁への届出が必要になる場合もあります。

  • 異動事項に関する届出(移転前及び移転後の税務署へ提出)
  • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出(移転前及び移転後の税務署へ提出)
  • 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届(移転前の管轄社会保険事務所へ提出)
  • 労働保険所在地等変更届(移転後の労働基準監督署へ提出)
  • 雇用保険事業主事業所各種変更届(移転後の管轄公共職業安定所へ提出)
  • 自動車保管場所証明申請書(移転後の管轄警察署へ提出)

登記申請

法務局の管轄が移転前移転後で同じ場合は、その法務局で登記申請を行います。おおむね、県内であれば同一の管轄となります。例えば、弘前市から青森市へ移転する場合は、同じ青森県内ですので、青森地方法務局へ登記申請をすることとなります。

ここでは、同一管轄内への本店移転の場合の登記手続きについて説明いたします。管轄外への移転手続きは、複雑になりますので、司法書士等専門家にご相談ください。

株式会社の本店移転登記申請手続きに必要となる場合がある書類は下記のとおりです。

  • 株主総会議事録と株主リスト(定款変更を行う場合のみ必要)
  • 取締役会議事録又は取締役の決定書

定款の提出は必要ありません。

登録免許税(印紙代)は、現在、3万円となっています。

目的変更の登記

会社の目的とは、会社の事業の内容のことです。会社は目的の範囲内でしか権利能力を有しません。例えば会社の目的が「1.建設業」とだけになっていた場合、飲食店の経営は守備範囲外ということいなります。この会社が別に飲食店を開きたいとなった場合は、目的の追加的変更が必要となります。

これについてはそんなに神経質になる必要もありませんが、上記のように事業内容が大きく異なる場合は、目的変更をした方がよいでしょう。

ちなみに、会社の目的は、いくつでも定めることができます。

目的変更が必要な場合

許認可が必要な事業を新たに営む場合、許認可に必要な事業に関する目的が定められていないときは、追加的変更が必須となります。

許認可を得るためには、目的に決まった文言が必要となる場合も多いので注意した方が良いでしょう。

参考までに、主な例を記載いたします。

目的例

旅行業旅行業法に基づく旅行業及び旅行業者代理業
倉庫業倉庫業及び倉庫管理業務
飲食店飲食店の経営
建設業建築工事業
運送業一般貨物自動車運送業
介護事業介護保険法に基づく指定居宅介護支援事業
警備業警備業法で定義される警備業
自動車運転代行業自動車の運転代行及び自動車管理業務
不動産業不動産の売買、仲介、斡旋、賃貸及び管理
酒類の販売等酒類の販売

登記申請

株式会社の目的変更登記の申請に必要となる書類は下記のとおりです。

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト

登録免許税(印紙代)は、現在、3万円となっています。

比較的簡単で、自分ですることも出来るでしょう。

商号変更

会社の商号とは、株式会社であれば、「株式会社○○」、「〇〇株式会社」など、「株式会社」を含む名称のすべてのことを言います。株式会社であれば、必ず、「株式会社」の文言を商号のどこかに使わなければなりません。ちなみに当方「株式会社○○弘前工場」のような、商号を実際に見たことがあります。「株式会社」の文言をどこかに使えばよいこととなっているので、これもオッケーなのですが、上記の場合は、紛らわしい商号となるので、避けた方が良いでしょう。

また、変更後は、本店移転と同様、税務署や社会保険事務所への届出が必要となります。

類似商号

旧商法時代は、同じ市区町村内で、同一の(又は類似する)商号を、同一の営業のために使用することはできませんでした。

現在、この制度は撤廃されました。現在では、同一本店所在地である場合は同一の商号を使用することができないのみとなっております。

しかしながら、やはり、紛らわしい商号を使用するのはお互いのためによくありませんし、明らかに他を妨害する目的などがわかる場合は、不正競争防止法違反となりかねません。

また、「銀行」「証券会社」など特定の業種を表す文言の使用制限や「株式会社殺人請負」など公序良俗に違反するような言葉はつかえないこととなっています。

これらの点に注意した方がよいでしょう。

使用できる文字記号など

漢字、ひらがな、カタカナのほか全角のローマ字、アラビア数字(123)を使用することができます。他に、「&」(アンパサンド)「,」(アポストロフィー)「、」(カンマ)「-」(ハイフン)「.」(ピリオド)「・」(中点)やスペースを使用することができますが、一定の制約があります。

登記申請

株式会社の商号変更登記の申請に必要となる書類は下記のとおりです。

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト

登録免許税(印紙代)は、現在、3万円となっています。

これも比較的簡単で、自分ですることも出来るでしょう。

増資の登記

増資とは資本金を増やすことです。増資をするためには、新たに株式を発行し、行うことがほとんどです。

気を付けなければならないのは、増資によって資本金額が変更になると、税制上の区分が変更となり、法人税や消費税に影響する場合がある点です。事前に税理士さんへ確認した方がよいでしょう。

登記申請

株式会社の増資に関する登記は具体的には、発行済株式の総数の変更登記、資本金の額の変更登記、場合によっては発行可能株式総数の変更登記です。

株式会社の増資の登記申請に必要となる場合が多い書類は下記のとおりです。

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 取締役会議事録(取締役会非設置会社は不要)
  • 募集株式の引受けの申込みを証する書面又は総数引受契約書
  • 払込みがあったことを証する書面(通帳のコピーを綴じたもの)
  • 資本金の額の計上に関する証明書

このほか、現物出資である場合は、他の書類が必要となります。

減資の登記

減資とは資本金を減らすことです。

気を付けなければならないのは、減資をする場合はあらかじめ、官報や個別の通知で銀行や取引先などの債権者へ知らせ無ければならないということです。官報公告は掲載まで時間がかかることが多く、また、登記手続きが可能となるのは、掲載後最低1ケ月の期間を要するので、綿密なスケジュールの確認が必要です。

登記申請

株式会社の資本金の額の減少の登記申請に必要となる場合が多い書類は下記のとおりです。

  • 株主総会議事録と株主リスト
  • 一定の欠損額が存在することを証する書面
  • 公告及び催告をしたことを証する書面
  • 異議を述べた債権者に対し、弁済もしくは担保を供しもしくは信託したこと又は資本の減資をしてもその者を害する恐れがないことを証する書面

登録免許税は3万円ですが、官報公告は15万円前後の費用がかかるようです。

会社の解散(清算手続き)の登記

後継ぎがいないので会社をたたみたい、景気が悪くなったので商売を継続しても意味がないなどの理由で会社を閉める場合、会社の清算登記が必要となります。

清算登記をする場合の注意点は、最終的に清算手続きを終え、清算結了の登記をするためには、債務がある場合、その完済が前提であるということです。ですので、目途が立ったら行うようにした方がよいでしょう。

また、本店移転と同様、税務署、社会保険事務所など各官庁への届出も必要となりますので、忘れずに行いましょう。

登記申請

株式会社の清算の登記は、具体的には、清算人及び代表清算人の選任登記、解散登記です。

株式会社の清算の登記に必要となる場合が多い書類は下記のとおりです。

  • 定款
  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 就任承諾書

登録免許税(印紙代)は、現在、3万9千円となっています。

清算結了の登記

会社が解散し、不動産や車両重機などは売却し、債務があればそれを済まし、残りがあれば株主へ分配し、財産がゼロになったとき、清算結了を行うことができます。

この清算結了は、解散後2ケ月経過を要することと、債務がある場合にはすることができないことに注意が必要です。

なお、結了後は税務署へその届出が必要です。

登記申請

株式会社の清算結了の登記申請には、下記の書類が必要です。

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 決算報告書(別途求められる場合があります。)

登録免許税(印紙代)は、現在、2千円となっています。

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