土地・建物の売買や相続手続きを進める上で、不動産登記はとても重要なものになってきます。
そもそも、不動産登記はなぜ必要なのでしょうか。
不動産登記とは
不動産登記とは、土地・建物などの不動産についての重要な事項を法務局の登記記録(旧:登記簿)に記載することです。高価な財産である不動産の所在、面積、所有者の住所氏名などを登記簿に記載し、これを公開することによって権利関係を明確にし、取引の安全と円滑を図るものです。また、所有者の住所氏名だけでなく、抵当権、賃借権などの権利の名義人が誰であるか、またその内容について、記載するものです。
不動産についての権利が所有権のみ(他の権利は無い)場合の登記事項(登記される事項)は次の通りです。
- 所在
- 地番・家屋番号
- 地目
- 種類
- 構造
- 地積・床面積
- 所有権登記名義人の住所氏名
これに、抵当権等あれば、抵当権の登記名義人が誰であるかや抵当権の内容について、記載されることとなります。
また、登記記録は、権利の移り変わりをも記録しており、前所有者が誰であるか、またその前の所有者が誰であるか、かなり昔まで遡れるようになっています。
不動産登記の重要性について、民法第177条では次のように定めています。
第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
「不動産に関する物権の得喪」について、土地の売買を例にご説明しますと、土地を売った売主は「土地の所有権」という物権を喪失します。
一方、土地を買った買主は「土地の所有権」という物権を得ることになります。つまり、土地の売買がなされて物権の得喪があった場合は、登記をしなければ第三者に対抗することができないということです。
第三者に対抗できないとは、簡単に言うと、その第三者にその不動産を取られてしまうという意味です。
例えば、マイホームを購入したにもかかわらず、先に登記をしたという別の所有者が現れたとしましょう。
先に契約を結んで代金を支払っていても、登記をしていなければ所有権は認められません。不動産は登記をして初めて「この不動産は私のものです」と主張することができるのです。不動産登記を怠ると、相続が発生した際にもトラブルを引き起こしかねません。大切な権利を守るためにも、取引が済んだらすぐに登記手続きを行いましょう。
売買
土地や建物を売買した場合は、売買を原因として所有権移転登記手続きを行うことになります。個人間での売買や宅建業者の仲介がある場合などのパターンがあります。個人間の売買でよくあるのが隣地の人に土地を売る場合や農地を売買する場合などがあります。農地の売買は、事前に農業委員会の許可を得る必要があるので注意が必要です。
個人間の売買の場合であっても、売買契約書や領収書を作成した方が良いでしょう。
宅建業者の仲介がある場合の、流れは次の通りです。
- 業者からお見積りの依頼・作成
- 業者による売買契約の締結
- 売買契約書の確認及び決済日当日に必要な書類の確認、また、日時の決定
- 代金決済日当日、書類への押印と必要書類のお預かり後、売買代金、登記料、仲介手数料の支払い
個人間での売買の場合も同じですが、農地の場合は許可が出るまで代金決済を控える必要があります。また、固定資産税の清算をした方がよいでしょう。
売買と固定資産税
固定資産税は、1月1日を基準日として、その時点の所有権登記名義人に対して課税してよいこととなっています。このことは、課税される者の判断を簡単にすることで徴税コストを抑える目的です。
実際に固定資産税等納税通知書が届くのは、5月前後です。
上記の事情から、例えば2月1日売買した場合、必ず売主の方に納税通知書が送付されることになります。
ですので、この場合、1月分(日割りだと31日までの分)の固定資産税を買主が売主に支払って、今年の分を払ってくださいねとします。
これが、固定資産税の清算です。
売買による所有権移転登記
売買契約が成立し、代金決済を行ったら、所有権移転登記申請をしましょう。売買による所有権移転登記申請は、売買の対象となる不動産の所在地を管轄する法務局で行います。
売買による所有権移転登記手続きに必要な書類は「登記原因証明情報」のほか、下記のとおりです
売主の場合
- 実印
- 印鑑証明書
- 登記識別情報または登記済証
- 固定資産課税明細書または評価証明書等
買主の場合
- 認印
- 住民票
売買にかかる税金費用等
令和4年現在、青森県内であれば、売買にかかる税金や費用は、次の通りですが、税金については、一般的な計算方法を記載いたします。詳しくは、税務署、または税理士さんや県税事務所に相談してください。また、譲渡所得税の申告は税理士さんにお願いしてください。
譲渡所得税(売主に課税) | 課税長期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除 譲渡所得税額=課税長期譲渡所得金額×20.315% |
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不動産取得税 | (土地評価額÷2+居住用建物)×3% 非居住用建物の場合税率4% |
登録免許税(印紙代) | 土地評価額×税率1.5% 建物評価額×税率2% |
司法書士報酬 | 司法書士に頼む場合、それぞれが決めた報酬額 |
特別控除は、マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例などです。
譲渡所得税の特例
マイホーム(自己の居住用不動産)を売却した場合、一定の要件を満たすと、譲渡所得税の特別控除を受けられます。令和4年現在、譲渡所得税の特別控除の特例は、下記のものなどがあります。
詳しくは、税務署や税理士さんに相談してください。
- マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例
- 低未利用土地等を売った場合の100万円の特別控除の特例
住所氏名変更
住所氏名変更登記は、売買や贈与による所有権移転登記や、抵当権設定登記、抵当権抹消登記をする場合には、必ずその前提として行わなければならない登記となります。
住所氏名変更登記に使用する書類は、住所であれば住民票、氏名であれば戸籍です。
使用する書類で問題となるのが、住所変更登記の場合であって、住民票を取得して登記されている住所と今の住所がつながらない場合、下記の書類が必要となる場合があります。
- 除票
- 戸籍の附票
- 登記済証
- 登記識別情報通知
- 評価証明書等
- 不在籍、不在住証明書
何度も引っ越しをしている、市区町村をまたいで引っ越しをしているなどの方は、住所変更登記をする場合に苦労することもございますので、早めの対応をされた方がよいでしょう。
住所氏名変更登記手続き
住所氏名変更登記は、住所氏名変更の対象となる不動産の所在地を管轄する法務局で行います。
住所氏名変更登記手続きに必要な書類は、下記のとおりです
- 住民票等
- 戸籍
令和4年現在、住所変更登記の登録免許税は、1筆につき1,000円です。
財産分与
財産分与とは、夫婦が離婚することとなった時、または、離婚した後、夫婦がその共有に属する財産を分ける行為を言います。共有に属するというのは単に形式的な名義でなく、実質で判断されます。例えば、居住用財産である家は、夫の単独名義であっても、特段の事情がない限り、共有財産と判断されます。
なお、離婚後2年以内であれば、家庭裁判所に財産分与の協議に代わる処分の請求の申立てを行うことができます。
財産分与にかかる税金費用等
財産分与に関する税金はかなり専門的な内容判断となりますので、ここでは令和4年現在での一般論を説明するにとどまります。詳しくは、税理士さんに相談されるとよいでしょう。
不動産取得税 | 原則として不動産取得税非課税。ただし、財産分与の実質が慰謝料の性質であると判断される場合、不動産取得税が課税される場合があります。 |
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譲渡所得税 | 財産を分与する者には、不動産購入時の価格より財産分与時の時価が高い場合は、譲渡所得が発生し、譲渡所得税がかかる場合がある。 |
登録免許税(印紙代) | 不動産評価額×税率2% |
財産を分与する者に、譲渡所得税がかかるというのは、踏んだり蹴ったりですね。
なお、登記申請手続きについては、売買とほぼ同様です。
本人確認
司法書士が、不動産登記に関する依頼を受けた時、必ず本人確認を行います。本人確認は、面談が原則です。
しかしながら、遠方で来られないなどの事情がございます場合は、ZoomやLINEで行ったり、本人限定郵便で行ったりする方法もございます。
本人確認の資料に使用できるもので主なものは次のとおりです。
- 免許証
- 健康保険証
- 個人番号カード(マイナンバーカード)
不動産登記の管轄
不動産登記申請の管轄は、登記申請の対象となる不動産の所在地を管轄する法務局です。令和4年現在、青森県内であれば次の通りです。
管轄 | 不動産所在地 |
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青森地方法務局 | 青森市、東津軽郡(外ヶ浜町、蓬田村、今別町、平内町) |
青森地方法務局むつ支局 | むつ市、上北郡(横浜町)、下北郡(大間町、東通村、風間浦村、佐井村) |
青森地方法務局五所川原支局 | 五所川原市、つがる市、西津軽郡(鰺ヶ沢町、深浦町)、北津軽郡(鶴田町、板柳町、中泊町) |
青森地方法務局弘前支局 | 弘前市、黒石市、平川市、中津軽郡(西目屋村)、南津軽郡(大鰐町、藤崎町、田舎館村) |
青森地方法務局八戸支局 | 八戸市、三戸郡(三戸町、南部町、田子町、五戸町、新郷村、階上町) |
青森地方法務局十和田支局 | 十和田市、三沢市、上北郡(野辺地町、七戸町、東北町、おいらせ町、六戸町、六ヶ所村) |