相続と遺言

相続と保証人

相続と保証人

1. 亡くなった親が連帯保証人だった場合に起こる問題とは

1-1. 「保証人」と「連帯保証人」の違いを正確に理解する

相続に関する問題で見落とされがちなのが、被相続人(故人)が「保証人」または「連帯保証人」になっていたケースです。両者には大きな違いがあり、その違いが相続における責任の重さに直結します。

一般の「保証人」は、主たる債務者が返済できなくなった場合に限り支払義務が生じる立場です。一方、「連帯保証人」は主たる債務者と同等の返済義務を負い、債権者は即座に連帯保証人へ請求することができます。とは言っても、実務上は、連帯債務しかあり得ないと考えた方がよいです。

つまり、親が連帯保証人になっていた場合、その責任は非常に重く、相続人にも直接的な影響を与える可能性があります。

1-2. 連帯保証人の地位は相続されるのか

原則として、連帯保証人としての地位や責任も他の債務と同様に「相続の対象」となります。相続人は、親が保証していた借金について「連帯保証人としての義務」を引き継ぐことになります。

知らないうちに大きな負債を抱えるリスクがあるため、親が亡くなった後には、保証人であったかどうかを早めに確認することが重要です。

2. 相続による債務承継の範囲と仕組み

2-1. 保証債務は法定相続分に応じて分割される

保証債務も相続財産の一部と見なされるため、相続人が複数いる場合には、その債務は法定相続分に応じて分割して承継されます。

例えば、保証債務が1,000万円で相続人が2人(各1/2)である場合、それぞれ500万円の保証義務を負うことになります。

ただし、実務上は、連帯保証しかあり得ないと言っても過言ではないので、保証債務を相続した場合は、結局、保証債務全額を負担することになるケースがほとんどです。

2-2. 相続人が複数いる場合の負担割合とは

保証債務の承継割合は、基本的には民法で定められた法定相続分に基づきます。遺言や遺産分割協議が成立していれば、その内容に基づいて債務の負担割合も調整されることがあります。ただし、債権者の立場からは関係ないことですので、内部的な取り決め以外の意味はありません。

3. 不測の保証債務を回避・軽減するための方法

3-1. 相続放棄によって責任を免れる選択肢

被相続人の保証債務を引き継ぎたくない場合、最も確実な方法は「相続放棄」です。相続放棄をすることで、財産・負債ともに一切を相続しないことになり、保証人としての義務も免れることができます。

相続放棄は、相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。この期間内に判断しなければ、債務を承継したと見なされるため、注意が必要です。

3-2. 放棄後に次順位の相続人へ債務が移る点に注意

ある相続人が放棄した場合、その地位は次順位の相続人へと移ります。たとえば、子が全員放棄した場合、被相続人の親、または兄弟姉妹が相続人になります。

保証債務もこの流れに従って移るため、家族内での連携や共有が欠かせません。「保証債務から逃れたい」という思いで放棄を選んでも、結果として他の親族に迷惑をかけることにならないよう、事前の情報共有が重要です。

4. 保証債務の事実を知らなかった場合の対応策

相続開始後に「重大な負債」に気づいたときの救済手段

相続人が、保証債務の存在を知らないまま3か月を経過し、相続を承認したとみなされた場合でも、「重大な事情」を理由に再申立てが認められる可能性があります。

熟慮期間の延長や錯誤による再申立ての可能性

民法上、熟慮期間(相続放棄の可否を判断する3か月)は「相続財産の全体を認識したとき」から起算されると解釈されています。したがって、債務の存在を本当に知らなかった場合には、熟慮期間の起算点をずらす主張が可能です。

また、「錯誤に基づく相続の承認」であると認定されれば、相続放棄の再申立ても認められるケースがあります。いずれにせよ、専門家に早めに相談することが重要です。

5. 親が連帯保証人だったかどうかの確認方法

信用情報の照会や金融機関への確認の手順

被相続人が連帯保証人であったかどうかを調べるには、以下の手段があります。

  • CIC、JICCなど信用情報機関への開示請求
  • 主要銀行・信用金庫に対する照会(口座があれば取引履歴から判明する可能性)
  • ローン会社や保証会社への問い合わせ

信用情報の照会は、相続人の立場であれば開示請求が可能です。ただし、被相続人との関係性を証明する戸籍や相続人であることの証明書類が必要になります。

保証契約書類の所在調査

家の中の金庫や書類保管箱、貸金庫などに「保証契約書」や「連帯保証承諾書」が残されている場合もあります。見つけた場合は、内容をよく確認し、保証債務の範囲・残額・契約期間などを整理しましょう。

また、契約書に記載されている債務者や債権者への連絡も重要です。

6. 連帯保証債務を引き継いだ際の対処方法

6-1. 任意交渉による減額・分割返済の模索

やむを得ず保証債務を相続した場合でも、債権者との話し合いにより、以下のような条件交渉が可能な場合もあります。

  • 支払額の一部免除
  • 分割返済の設定
  • 元本据置・利息軽減

また、保証債務が契約違反による不当な請求である可能性もゼロではありません。契約書や返済履歴をもとに、法的な正当性を検討することも忘れずに行いましょう。

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