相続放棄の手続き

親が多額の借金を残して亡くなった時など、残された家族は、相続放棄の手続きを行った方がよい場合があります。相続放棄の手続きを行うと、はじめから相続人でなかったことになりますので、借金を支払う必要がなくなります。

ただ、プラスの財産である家、土地、建物、預金などを相続することができなくなりますので、そのデメリットに注意が必要です。生命保険の保険金については、ケースバイケースです。

相続放棄申述の効果は、要するに、一切の財産放棄をするということです。

相続放棄の手続きは、家庭裁判所で行います。

相続放棄の手続きは、原則3ケ月の期間内に行わらなければなりません。

相続放棄申述書

相続放棄を行うためには、相続放棄申述書(読み方は「そうぞくほうきしんじゅつしょ」です。)の作成が必要となります。

ご自分で行いたい方は、書き方の参考までに様式テンプレートを公開しておりますので、よろしければご活用ください。ダウンロード(word)はこちらです。

相続放棄申述書の、記載内容は、相続人の本籍、住所、連絡先などと、被相続人の本籍、最後の住所、死亡日などです。財産の内容は、必ずしも記載内容とはなりません。色々な事情により、被相続人について深く知りたくない場合もありますので、専門家に頼む場合はそのあたりも相談されると良いでしょう。

ご自分でされる方は、原則自分で記入されると良いでしょう。代筆可能な場合もございますが、原則は本人が記載記入することになっています。

相続放棄必要書類・費用

相続放棄の申述に必要な書類は、ごく簡単に言うと、下記のとおりです。

  • 被相続人(死亡人)の戸籍謄本等
  • 被相続人(死亡人)の除票(住民票のことです)
  • 相続人の戸籍

印鑑証明書は必要とされていません。ほかに下記のものが必要となります。

  • 収入印紙800円分
  • 切手(各家庭裁判所によって異なります。)

あえて簡単に書いてみたのですが、兄弟や場合によっては子供が被相続人(死亡人)である場合などは、死亡人の戸籍以外に、その相続関係がわかる戸籍謄本等を求められる場合がございます。

その相続関係のわかる書類というのは、被相続人の「生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本等」ということになります。

兄弟姉妹の相続放棄については、一般的に書類が多くなります。

書類についての解説

役所で発行する書類の名前について、言葉の意味が全然わからなくありませんか。簡単に解説をします。

  • 家族 基本は夫婦と未婚の子。家族であれば同一戸籍です。
  • 世帯 生計を一にする集団。家族でなくても生計が一緒であれば同一世帯です。同一世帯であれば同じ住民票です。
  • 謄本 全員の意味です。戸籍謄本:家族全員載っている書類
  • 抄本 一部の人の意味です。戸籍抄本:自分だけ載っている書類
  • 全部事項 謄本と同じ。
  • 一部事項 抄本と同じ。
  • 除籍 更新されなくなった古い戸籍のこと。
  • 附票 戸籍に載っている人の住所が書かれた書類。
  • 除籍になる 死亡したり結婚・離婚したりして戸籍からでていくこと。また、別の使い方として、その書類自体が除籍の扱いになること。
  • 改正原戸籍 役所の都合で更新されなくなった古い戸籍のこと。「かいせいはらこせき」「かいせいげんこせき」と読みます。

相続放棄どこで手続き?

相続放棄の申述の手続きの管轄、つまり、対応する家庭裁判所は、被相続人(死亡人)の最後の住所地を管轄する裁判所です。例えば、被相続人が弘前市内でお亡くなりになった場合は、令和4年現在、青森家庭裁判所弘前支部が管轄となります。

よくあるのは、自分の住んでいるとこの家庭裁判所に行って違いますよと言われるパターンです。相続人の住んでいるところの家庭裁判所ではできません。

例外は、私の知っている限りではほぼありませんが、3カ月以内の期間が迫っていいたため、管轄外であっても受理していただいて、それを移送していただいたことがあります。裁判所も親切だなあと思いました。

場所もそうですが、対応する裁判所は、家庭裁判所です。地方裁判所や家庭裁判所では受け付けてもらえませんので注意が必要です。

管轄となる家庭裁判所が遠方であるときは、相続放棄申述書を郵送すると良いでしょう。

相続放棄申述の流れ

相続放棄申述についての流れは、一般的には、下記のとおりです。

  1. 相続放棄申述書・必要書類・印紙等の提出
  2. 照会書回答書が家庭裁判所から郵送
  3. 照会書回答書を記入し返送
  4. 内容が認められれば受理
  5. 家庭裁判所より受理通知書の送付
  6. 受理後、必要であれば「相続放棄受理証明書」の取得

相続放棄受理証明書は、相続登記や預貯金の払戻に使う書類なので、それらの手続きをする必要がある方は、取得した方が良いでしょう。令和4年現在、1通150円で取得することができます。

また、相続放棄受理証明書は、本人だけでなく、その利害関係人でも取得することができることとなっております。詳しくは、専門家にご相談ください。

3ケ月以内

敢えて間違いを犯してわかりやすく言えば、相続放棄の手続は、被相続人が亡くなった時から、3ケ月以内にする必要があります。

3ケ月を過ぎてしまうと、単純承認をしたことになります。単純承認とは、プラスの財産である預金貯金、不動産とマイナスの財産である借金を含めて全部を相続するということです。要するに、親の借金を支払っていかなればならなくなるということです。

単純証人のほかに限定承認の手続きもありますが、実務ではほとんど使われていません。

3ケ月を過ぎても

被相続人が死亡してから、3ケ月を過ぎても、相続放棄が可能な場合があります。実は、実務上の相続放棄は、被相続人が死亡してから3ケ月を過ぎてしまっている場合が多いです。

相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第1項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。(民法第916条)

要するに、被相続人が死亡していても、遠方在住で疎遠であった場合や、第1順位の相続人である子が皆放棄して、第3順位の被相続人の兄弟が相続人となったのに、その放棄の事実を知らなかった場合などは、それを知った時から、3ケ月以内に手続きをすればよいことになります。

相続放棄期間伸長

相続放棄は自己が相続人となったことを知った時から3ケ月経過をしないうちに行わなければならないことは、上記のとおりです。

ただ、3ケ月以内に思うように調査ができず、判断がつかない場合もあります。

そのような場合、「相続の承認又は放棄の期間の伸長」の申立てを行うと良いでしょう。

相続放棄期間伸長の申立てが認められれば、期間を延長することができます。

最後まであきらめない

もし、自己が相続人となったことを知った時から3ケ月経過してしまい、相続放棄期間伸長の申立てをもしていなかったら、もう相続放棄の手続きをすることができないのでしょうか。次の判例があります。

相続人が、相続開始の原因事実の発生と、そのために自身が相続人になったことを知った場合であっても、右各事実を知った時から3か月以内に限定承認または相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全くないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、相続人が前記の各事実を知った時から熟慮期間を起算すべきであるとすることは相当でないものというべきであり、熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時または通常これを認識しうべき時から起算すべきである。(最判昭和59年4月27日)

難しくてよくわからないと思いますが、3ケ月経過してしまっていてもできる可能性はあるということです。

具体的には、遠方に住んでいて、親はアパート暮らしで亡くなったので、めぼしい財産は無いと思っていたのに、死亡した時から3ケ月を経過後に、親の債権者から借金支払の催促の手紙が来た場合などは、上記に当てはまる場合があるということです。

3ケ月経過後も、必ずしも相続放棄ができるわけではありませんが、専門家に相談してみた方がよいでしょう。

当事務所のご対応

青森家庭裁裁判所弘前支部の管轄は、令和4年現在、弘前市、黒石市、平川市、中津軽郡(西目屋村)、南津軽郡(藤崎町、大鰐町、田舎館村)と青森市内の旧南津軽郡浪岡町です。もちろん他の管轄の地域も対応可能です。

相続放棄について弁護士さんに頼んでも良いですが、司法書士も対応可能です。費用についてもご相談させていただきます。

相続放棄のご相談も、当事務所におまかせください。

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